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宮城県復興計画

復興のあり方と宮城県震災復興計画について

1、「自然災害は、まず、救援という行為を通じて基本的な人道支援に関する緊急の提案を必要とする。その次に復興(rehabilitation)が来るが、津波を受けた国々では、5年ないしはそれ以上の期間を必要とする。この期間においては、コミュニティーと農業、漁業、水産業、そして観光業を含む様々な経済部門との持続的な開発に力を入れることになる。そして救援活動からの復興へのその後の発展に動くにつれて、資源の最適な使い方を研究して支援の対象をさだめるためにより多くの調整(coordination)が必要となる」

これは、スマトラ沖大地震・インド洋大地震(M 9.1)が2004年12月に発生してから、わずか2ヶ月後の2005年2月28日バンコクで開催された国際会議で採決された、「アジアにおける津波災害を受けた国々の漁業と水産業復興に向けた地域戦略」の冒頭の文章です。

ここでは、あくまでも復興は「人」、「人の生活が成り立つこと」が最優先の課題であり、国際的かつ地域的な合意と整合性ある復興であるべきとのメッセージを読み取ることができます。また、漁業、水産業の復興に関しては、天然資源の環境面での持続可能性、コミュニティーの維持、漁撈後の女性労働の評価等が重要なビジョンとして盛り込まれています。これに対して、先進国たる日本の復旧復興ピジョンは如何なるものでしょうか。

今回の日本の特徴は「人」「人の生活」の復旧が直接前面に出ず、「従来とは違った新たな制度設計」や「思い切った手法を取り入れること」が不可欠と強調し、その主体、方向が何なのか一切示していないのが特徴です。

その中で、宮城県知事の突如とした「水産業特区」構想は、こうした国の意味不明ともいえる復旧・復興計画の具体的目玉ともいえるものです。港の機能をすべて失った漁民を前に漁業権の民間解放を迫るといった構図は、異様としか言えないものです。まして、先のアジアの復興戦略に比べると「人」がまったく問題にされていないとい。う国際的にも驚くべき内容といえましょう。

あるべき復興の入り口は「人」であり、「生活」「生業」の復旧でなければなりません。その手法として、県民・市民参加の復旧・復興があるべきです。では、それは何か。仕組みは簡単です。県民・市民が小グループに分かれ、住宅、生業、学校、コミュニティー、交通政策などについて徹底議論することです。その間行政は、ガレキ撤去、港の復旧などをすすめるのです。この手法は、今国家財政の危機に悩むアイルランドで「私たち市民」運動としてすでに展開されているものです。イエスかノーか問う住民投票だけが市民参加型政治ではないのです。私たち、県民センターが目指すものもその一つの型と思います。多くの市民の参加を得てわれら市民の復興を目指しましょう。

2、「宮城県震災復興計画(第2次案)」の特徴について

宮城県はこの間、「震災復興計画」について、事務局原案、第1次案、第2次案を出し、8月12日の「復興本部会議」の最終議論を踏まえて「最終案」を決める段取りといわれています。

「第2次案」には、原案にはなかった『地滑り・宅地被害、対策』加えられ、さらに「分野別の復興の方向性の前文」には、①市町村長会の要望に基づき『ものづくり産業や観光の分野などで内陸部と沿岸部の連携を深め、全県的な復興に取り組む』、②仮設住宅建設やがれき撤去を「プレハブ協会」や「ゼネコン」に丸投げした村井県政への“県議会全体の強い怒り”を踏まえ、『復興事業の実施が県内経済の活性化につながるよう、県内企業への発注や地元調達の拡充に努める』と加筆されました。

しかしその一方で、③『あわせて各分野にわたる思い切った規制緩和、予算や税制面の優遇措置などを盛り込んだ「東日本復興特区」の創設を国に提言し、復興の加速化と、抜本的な再構築を図る』などと明記し、文字どおり「TPP推進」や「消費税増税」など、管内閣の「新自由主義路線」「構 造改革路線」を後押しし、典型的に推進しようという、野村総研との二人三脚ぶりが露骨に示されています。

村井知事が雑誌に発表した『復旧なき再構築』論に基づく、「高台移転」「職住分離」「多重防御」「漁港集約化」「水産特区」「農地集約」「民会資本導入」「ゾーニング」「グローバルビジネス」・・・などなど、はそれぞれの土地で何百年・何十年と積み上げてきた生業(なりわい)を無視して、乱暴に・画一的に出せる結論ではありません。

『復興』を食い物にしようという「財界・シンクタンクの代弁者」になり切っており、そのご褒美でしょうか、7月29日の国の「復興計画」には『劣後なき漁業権を民間企業に与える』ことが明記されたようです。

しかし、『箱庭で人形と粘土で模型を作るのとはわけが違います』と強調されているように、あくまで『被災者や住民自身の自主的論議を尊重し、それらの「住民復興計画」に対する財政措置を差別なく行うという原則』を堅持した『救援jと『復旧・復興』を進めましょう。