<農業復旧・復興に向けた動向の特徴>
今回の大震災の農業への打撃は、代々継いで来た家屋敷もろとも集落、そして農地がすべて消失したことであり、農家の気力を奪うに充分なもの でした。
しかし、文字通り農民の力は雑草の如く早くも芽を出しはじめています。塩害水田にあえて挑み、打開策を見出そうとする農家、“百万本のバラ”ならぬ“百万本のイチゴ株”が他県から供給され、困難の中で、イチゴ栽培の取り組みを始めている農家も続出しています。また仙台平野の稲作の中心地域では、東部道路西側にある集落の農地を活用して、集落の集団移転・農業発展構想を避難所閉鎖の前までの合議に向けた取り組みも開始されています。
その源動力の一つとなっているのが、国の第一次補正予算で実施されている「地域農業復興組合」です。内容は広大な地域被災農地の復旧に向けた出役作業ですが、地域では数少なくなった専業農家が中心となり、兼業農家が地域の専業農家と委託している利点を継続して、将来的には、農地集約の基点となる希望をもって日々従事しています。また、放射能被害に悩む山間酪農家からは、被災農地でハト麦栽培の相談もあり、地域を越えた相互協力の関係が築かれています。
しかし、放射能被害は、きわめて深刻化しています。こうした農業者の主体的努力の上に国・県の復旧・復興事業支援が最大限反映されるよう地元JAとも協同して、その実現にむけての活動を消費者と連携して推進したいと思います。
また、福島県に続き宮城県でも、「稲わらの放射能汚染」による『肥育農家の肉牛の出荷停止』の政府指示が28日に出され、酪農家を含む畜産農家は新たな深刻な事態に直面しています。稲わら業者などの関連業者はもとより、今年産米をはじめ、農産物への風評被害も、急速に広がり始めています。
<当面の復旧・復興構想>
1 .放射能の農業全般への影響調査を一刻も早く実施し、営農見通しを明確に示す。
2 .農業者の自助努力を評価して、初めに民間参入ありきの議論はやめるべき。
3 .集落機能維持を可能とする自主的集団移転への国・県の積極的対応を求める。
4 .高台移転にこだわらない国・県の柔軟な政策対応(被災家屋、地籍の震災時の評価等)。
5.農業団地構想の主体に農業者を据え、アドバイザーを配して計画の立案、実現に努める。
6 .元の場所に留まりたい意向の農家に対しては、「減災」を念頭に「教育農場、農家」の創設の道を開く(複合経営農業を実施し、学校教育の一連の教育プログラムの中に位置づけ、物質循環、環境保全を学習の一環として体験・見学を通して体得させる経営体)。
7 .農業の本格的始動を模索するともに、その間の一定の生活補償手段の提示(現在の地域農業復興組合の継続と地域農業推進者組合への発展的転換など)。
8 .イチゴ農家の復旧支援を強め、いたずらに団地構想を持ち込むのでなく、農家集団の自主性を尊重すべき。
9 .放射能汚染による、酪農・肥育の畜産農家に対する、賠償金の即時・全額支給の実施。全頭検査体制の抜本強化による出荷可能頭数を最大限に確保すること。
10.産米や野菜などの農産物の全量検査体制を確立し、出荷の安全確保に万全を期すこと。農家経営への賠償と生活保障を速やかに行うこと。土壌の検査と除染体制を早急に確立し、推進すること。