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地滑り・宅地被害問題

今回の東日本大震災では、・沿岸部の壊滅的な津波被害にとどまらず、宮城県南部の丘陵地や、大崎市、石巻圏内および仙台市丘陵部の宅地で地盤崩落などが多発しました。県の調べでも、6月17日時点で宅地の危険度判定で「立ち入り禁止」と判定されたのは9市町で886件、このうち仙台市には794件で9割が集中しています。同じく「要注意」判定は、10市町1470件、うち仙台市1310件です。仙台市内で10軒以上のまとまった被害がでている地区は、65ヵ所にも上っています。

地盤災害の発生を受けて、仙台市は、3月28日に太白区緑ヶ丘4丁目の110宅地に避難勧告を出しました。また二次被害の恐れがあるとして、6月16日以降、約30ヵ所161世帯に順次避難勧告を出しています。現在も多くの被災者が不安な思いで避難生活を続けています。

このような深刻な地盤災害・宅地被害の発生にもかかわらず、宮城県が発表した復興計画は、内陸部で発生した膨大な住宅および宅地災害にはほとんど触れていません。「県全体の復興イメージ」の中では、内陸部の住宅や公共施設、産業施設、文化財などに大きな被害が生じているとしながらも、「内陸部を含めて県全域でこのような被害を早急に復旧・復興し、県民生活の充実や産業のさらなる集積に努め」と抽象的に述べているだけです。また具体的取り組みとして、「安全な住環境の確保」のために「被災した宅地・擁壁の復旧を支援」する事業として例示されているものは、自治体や被災者が大きな負担を強いられる「宅地耐震化推進事業」と「がけ地近接等危険住宅移転事業」の2つだけです。

被災団地の多くは、住民の高齢化がすすみ、所有者自身による復旧はきわめて困難です。しかし、現行法の下では個人の宅地被害に対する公的支援は無いに等しい状況です。仙台市によると、現行の適用条件のままで活用できる災害復旧事業に関する国庫補助制度は、被災個所の1割程度でしかありません。新潟中越地震などの特例措置を適用した場合でも4割しか対象になりません。

宅地造成規制法の改正前に開発された古い造成団地といえども、開発を認めたのは行政です。行政責任は免れません。開発された時期にかかわらず、宅地被害の救済。・復旧は行政の責任において行う必要があります。被災者の生活再建を支援することは、憲法25条を持つ国として最低限の責務です。

深刻な地盤災害・宅地被害に苦しむ被災者を救済するために、次の政策提言をいたします。

1、被災地区や被災した宅地毎に被害の態様は様々です。一人の落ちこぼれもなく全ての被災者を救済することを大原則に、可能なあらゆる手段を柔軟に活用して、復旧・復興を進めること。

2、被害が甚大で規模が大きく、被災者個人で復旧することはできません。
がけ崩れ防止事業など被災宅地の安全確保は、公共工事として復旧を行うこと。
新潟中越地震などの特例措置を適用するとともに、より一層の要件緩和・特例措置を行って被災者全員の救済を行うこと。
国においては、宅地災害関連復旧事業の国庫補助率を抜本的に引き上げて、基礎自治体や被災者の負担をなくすこと。
ただし、県および関連自治体は、国の財政措置の拡充を待って手をこまねいているのではなく、自らの負担を厭わず被災者救済に万全を期すという姿勢に立つこと。

3、国において、被災者個人に対する補助金等宅地被害に対する公的支援制度を創設すること。

4、自治体独自の助成制度をつくること。

5、被災者生活再建支援制度を見直し、支援金の増額を行うと共に、宅地についても被害認定に加えること。