<漁業復旧・復興の胎動>
壊滅的打撃を受けた県の漁業、漁港、漁村、水産業その復旧・復興は、漁業界単独の力では回復不可能な被災規模です。国費の思い切った資金投入が不可欠です。何としても国が抜本的対策を講じるよう、漁業団体と共同して働きかけを強めねばならないと考えます。
一方、漁港、漁村に目を転じると、ガレキの山に囲まれつつも、雄々しく立ち上がっている漁業者の姿を目にすることができます。県内の各浜では、ガレキ処理に従事しつつ、目の前に迫る漁期を横目に、可能な限りの再利用可能な漁具を収集しています。全国各地からの船、漁具の支援も続々と続いています。また、コミユニイテイーの機能を生かした住居の集団移転に向けての具体化も着々と進んでいます。 こうした動きにより一層の活力を与えるには、行政の素早い対応が求められます。
復旧に関しても問題は多くあります。ガレキ処理の雇用制度は有力な支えとなっていますが、補助的労働に参加している女性労働は無償です。 こうした細部にわたる状況把握と素早い対応は漁業者の復旧に大きな力となることはいうまでもありません。
漁業復興に向けての最大の障害は、村井知事による「水産特区」構想への執着です。漁業権の民間資本への開放は何としても阻止しなければなりません。構想では民間への漁業権の開放による民間資金の導入が可能とな るとしていますが、利益追求を目標とする民間企業にとって、国に代わって復旧のための相当な投資が見込めることはありえません。むしろ7月に入って、放射能汚染問題もあり、石巻市雄勝町では、8 名の漁業者と「銀ザケ養殖」を行っていた企業『日水』が、理由も言わずに撤退したという怒りに満ちた状況が伝えられました。
さらに、岩手県では、国の予算を待っていられないと、約4000隻の漁船を新造・修理して提供する予算と、約8億円の養殖施設の復旧費予算を単独県費で臨時議会に計上、議決し、執行しています。ところが宮城県は、「創造的復興」の名の下に、復旧にほとんど手を加えない現在の県政のあり方には漁業者と共同して厳しく対応を迫ることが急務です。
<当面の復旧・復興構想>
1 .「水産業特区」構想の白紙撤回と早急な復旧対策の実施
(142あるすべての漁港の応急的対応処置の早期実施、2Om以上の海中のがれき撤去)
2 .県営2 7港への漁港の集約化の見直し
§ とくに、集約港への他の小漁港の船の保留は、小漁港消失、ひいては漁業権の根本的消失につながる契機となることが充分に予想されます。
§ 長年にわたり、維持されてきた漁村コミュニイテイーの存在は、今日問われようとしている日本の「生活の質」の一つの表徴であり、文化でもあります。
3 .消費者特に県民との連携を強め、新しいかつ効率的なフードシステムの再構築を図る。
4 .当面の間、漁業関係者間での自主的協議による限られた生産手段の利用方法についての検討結果を尊重した復旧対応。
5 .職住接近を可能にする集落移転への支援。