地域再生の底力、中小・商工業の再生を
岩手県の復興計画は「なりわい」の再生として漁業協同組合による漁船・養殖施等生産手段の一括購入・共同利用システムの構築、復興支援ファンド等による二重債務解消に向けた支援、仮設店舗・工場などの事業再開に必要な整備支援や融資・助成制度の創設・拡充をいち早く決定しました。岩手県に比べ、宮城県の対策はあまりにも遅すぎます。県がまとめた農林水産関係被害は7月13日現在、速報値で1兆2千億円に達します(農業関連4891億円 畜産関連50億円 林業関連136億円 水産業関連6843億円 県所管施設86億)特に水産業関連の被害が甚大でした。
漁港施設岸壁の沈下・市場や流通加工施設の損壊・養殖施設・漁業用資材・水産物の流出、12,023隻に及ぶ船舶の大破等で水産関連産業は完全に生産がストップしてしまいました。それに伴い雇用もストップ、運送関連業者や周辺の料理飲食業も仕事を失いました。雇用調整助成金の事業主負担もすでに5ヵ月、資金繰りが大変です。
全商連は7月9日の第二回理事会で「日本版・小企業憲章」の提案を行いました。その中心テーマは、2010年6月18日民主党政権が閣議決定した「中小企業憲章」をより実効あるものにする「中小企業を『経済をけん引する力』『社会の主役』」に位置付けると云うものです。以下、「中小企業憲章」を参考に、商売・事業を再開するに当たって急ぐべき課題を整理すると次のような施策が必要と思われます。
(1)一日も早く安心して住める住宅政策で街に活気を取り戻すこと
○ 仮設住宅の入居は抽選でなく町内会単位に。
○ 被災者住宅再建支援法の公的支援の増額を。
○公営住宅の建設で人口流出にストップを。
(2)事業再開と雇用拡大を支援する政策で安定雇用を確保すること
○ 災害復旧は地域の業者と労働者の手で。
○ 事業者と市民の「二重ローン」の凍結と事業・生活再建資金に公的支援を。
○ 雇用調整助成金の増額と新規雇用に助成を。
○ 漁網・養殖施設・漁業施設・漁船の一括購入支援と水産加工業者へ緊急支援を。
○ 津波被害の農地の一括買い上げと、水路と排水下水施設の補修を。
(3)コミニュティービジネスで地域経済再生と住民生活保護の政策を!
○ 共同店舗・仮設工場・移動販売車購入事業に国・自治体からの補助を。
○ 参加する中小業者・労働者の事業体に公的補助を。
○ 事業の共同化・地産・地消で地域活性化を。等々です。
(4)貸し手と借り手を同時に救済して地域経済の復旧を!
県内で営業している信用金庫は7信金、信用組合6信組ありますが、いずれも今回の震災で貸し手としての被害が心配されます。それら信金・信組・銀行の融資を保証する宮城県信用保証協会の保証残高は、3月末時点で35,491件、保証残高は3869億2600万円になりますが、今回震災と津波被害が大きかった海岸付近の自治体に本店を有すると思われる融資保証残高は7割に達すると思われます。
大震災前の2月の景況は、「全国景気DI」で「4ヵ月連続改善」と報道されていました。そこにきた震災と原発被害、いわゆる「二重ローン」に対する救済スキームを明確にしなければ地域経済は一歩も前に進まない。待たされた挙句「救済不可」の決定が出る事になれば地域経済は瓦解します。